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思えば遠くへ来た私

思えば遠くへ来た私

イギリスを一人旅してみた

ある日母と喧嘩して,イギリスに行ってやる!と思い立って出かけたのが発端だった。
二十歳になったばかりで,英語もイエスとノーしか言えないのに,ある日とうとうイギリスへと旅立った。

飛行機はあろう事かアエロフロートだ。
当時はどこの飛行機がいいなんて全然知らなかったから,安けりゃいいと思っていた。

予約していたロンドンのホテルについても,フロント係のおじさんが何て言ってるのかわからなくて、ずいぶんあきれられた物だった。

翌朝は5時に目が覚めてしまい,一人でぼーっとまどの外の公園を眺めながら夜が明けるのを待った。

エディンバラでは思いのほかいい宿(B&B)が見つかって,町を歩く足取りも軽かった。
見所であるホリルード宮殿やエディンバラ城以外にも、町中あちこち歩き回って,疲れたら丘に行って風に吹かれてぼんやりしていた。

インバネスは思ったより小さな町で、B&Bも家庭的で,人見知りの激しい私は,朝ご飯の時黙りこくっていて,偏屈な日本人と思われたに違いない。

今はもう嘘だとばれたネス湖も,あの頃はまだ不気味な雰囲気が漂っていて,きっと私が目撃者になってやると,意気込んで湖上を長時間眺めていた物だった。

グラスゴーのユースで,一人ベッドの上で本を読んでいると,変な男が入って来て,私を見るなり驚いた顔をし,ごまかすように何かを尋ねて来た。が、英語なので私に答えられる訳も無く,その後その男のことは忘れてしまった。今思えば,この男が...。

湖水地方ではピーターラピッドで有名な,ベアトリクス・ポッターの家に行く。その家もそれなりに良かったが,私が一番気持ちよかったのは,ただの田舎道を一人で歩き回る事だった。

嵐が丘の舞台となったハワースは,私が又絶対行きたい所のリストに載っている。ブロンテ姉妹の散歩道と呼ばれる,荒野の小道をどこまでもさまよい歩くのは,本当に気持ちよかった。なんか私、歩いてばかりいたみたい。
この町で食べたスコーンの味がいまだに忘れられない。

カーディフと言う町に確かに寄ったのだけど,ほとんど覚えがありません。
登山列車に乗ったのはこの町かな?
確か雨に降られて、それでも有名な橋を見に行ったっけ。

ストラットフォードでは,シェイクスピア劇場でハムレットを観劇した。シェイクスピアの生家に確か行ったのだけど,ボロボロだった記憶が...。

バースに着いて宿を探したが,どう探しても見つからず,結局あきらめてソールズベリーに向かう事に。

ストーンヘンジと呼ばれる巨大岩の群れは,思ったほど面白みがなくてがっかりする。
近くにいた羊を見ていた方が,私には面白かった。

ペンザンスの感じのいいB&Bに泊まって、バスでランズエンドまで足を伸ばす。日本に帰ったら,この宿からはがきが届いていて,とても嬉しかった。

確か、ライという小さな町で、この旅一番のいい宿に泊まる。が、歩くのが好きな私にとって、この町に石畳は足にきた。

なぜかポーツマスで一泊する事にした私。理由は...?海辺でドッグショーをやっていて,世の中にこんなに賢い犬がいるのかととても感動した。でも,夜入ったレストランのステーキは超まずく,こんな物にお金を払うのかと,悔しい思いをする。

カンタベリーでは5月だというのに、あられに降られて雨宿り。あまりにやる事が無く、シェールの「月に魅せられて」と言う映画を見た。確か来週当たり、フランスのテレビで放送されるみたい。もう一度ちゃんと見てみよう。

ロンドンでは、2度観劇した。(me and my girl というミュージカルと、もうひとつは?)
キューガーデンに行ったり、バッキンガム宮殿辺りをうろついたり、大英博物館でミイラを見たり、ごく普通に観光して満足だった。でも宿ははずれ。イギリスのB&Bは北に行くほど当たりみたい。安くていい宿がすぐ見つかる。北から南に下って来た私は、そう言う訳で、旅を進める度に宿に幻滅させられた。

英語もろくに喋れなくても、海外旅行は一人で出来る。約一ヶ月かけてイギリスをまわったが、命に関わるような事なんてなかったし、それなりに楽しめた。でもやっぱりその国の言葉を喋れたら、それに越した事はない。英語も喋れず、人見知りもする私がイギリスで撮った写真には、私の足とお城とか、私の指とテムズ川とか、それもやっぱり悲しいし。

ところで日本に着いてからわかった事だが、私が大事に鞄の底に入れていた日本円を盗まれていた。このお金は東京から実家の家に帰るための物だったので、ほとんど一文無しの私は仕方なく、東京駅のみどりの窓口で「お金がないけど新幹線に乗りたい」と訴えて、東京駅の駅長室まで連れて行かれ、そこから電話で父に、先に最寄りの駅に代金を払ってもらい、駅長さんが一筆書いた手紙を、黄門様の印籠のように改札口で見せながら、家に帰った苦い思い出がある。
絶対グラスゴーのユースで見た、あの変な男が犯人に違いないと確信しているが、真相はもちろん謎のままだ。


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